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総合園芸大系＿園芸総論 園芸の意義と其範囲 辻村常助 |
第二章 園芸の意義
第一節 園芸の定義に就て諸学者の説
園芸の四分科
園芸は之を稊や程度を同ふする四種の科目に分ち、其各分科は作物の生産を包含するのみでなく、其他生産物の加工若しくは販売の業務をも含むのである。即ち
果物学又は果樹栽培
蔬菜学又は蔬菜栽培
花卉栽培
造園術
（K.H. Bailey. Encyclopedia of American Horticulture p. 755. Standard cyclopenia of Horticulture p. 1501）
さすがのベリー博士が、如何に園芸の解釈を扱つたかが思ひ遣られる。蓋し農業・椊物学・芸術と云ふ三方面に園芸なるものが投脚して、而も其中の何れとも同じからぬ別種の面目を維持して居る。則ち之を何う片付けるかに苦んだ迹が、歴然として紙面に躍如たりで、結局無解決に終つて最後に四分科を挙げ、其業務によつて園芸を直指することに終つた。
著者の考によると、ベリー氏が此論理的重囲に陥つて切り開きの付かなく成つた理由は、芸術と云ふものを極めて狭義に考へて居つた為と、果物や蔬菜の類は只食欲を満足させる為に作られるものとして、之を単なる農産物の一種と思つて居る為とであらう。果物蔬菜の類が単なる食品で無く、香味色彩悉く美の要素を受け入れて作出さるべきものであり、且其生産の技術に於て、米麥豆菽の如く一列一体に取扱はれるので無く、一々術者の個性がはたらくものである事に、考へ及ばなかつたのも一因である。畢竟（ヒッキョウ）米国の如き機械力を尊重し、凡てが大量生産的であり、且天然要素に依頼し過ぎる園芸組織の国柄では、其考に百尺竿頭一歩を進め得なかつたのも、あながち無理な事では無い。
