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総合園芸大系＿園芸総論 園芸の意義と其範囲 辻村常助 |
第二章 園芸の意義
第一節 園芸の定義に就て諸学者の説
Gardeningの示す範囲
大井上康氏も同意見であつて、雑誌家庭之園芸第二巻第九号に執筆された、其要点は。
「英語のHorticultureは広義にして園芸なる邦語に相当し、果樹、花卉、蔬菜及造園等の諸分科を含めるものにして、gardeningは単に狭き意味にて庭の一部の技術、主もに花卉、庭園、蔬菜の一部を云ひ、大規模なる果樹園芸は含まれない。《
と云はれ其他の欧州後各広義と狭義との別ある事を述べられて居る。今了解の便宜の為大井氏の区別を表解すると
| （広義） | （狭義） | |
| 英語 | Horticulture | gardening |
| 独逸語 | Hortikultur | gartenbau gartenkunst （主に庭園に通用す） |
| 西班牙語 | Horticultura | huerta-cultura （蔬菜園芸又家庭園芸、 時として小なる果樹園に適用す） |
| 伊太利語 | Ortichultura | giardinaggio |
| 阿蘭陀語 | tuinbouw | tuinkunst |
| 仏蘭西語 | Horticulture | jardinage （主に蔬菜栽培又は家庭園芸） |
と云はれた。尚又大井上氏が例證として示された西班牙の園芸家ブェナヴェンテュラ・アラッツオ氏の定義は
Horticulturaは蔬菜園及果樹園を耕作する作業にして、且つ能ふ限り最高級品の生産を目的とす。Huertaは頗る小地積の土地を極めて集約に行ふ処の完全なる土地利用の方法である。即ち労力としては畜力を用ひず、専ら尽力によつて営まる。併しながら此huertaの語は主もに土地を耕作する意味であつて、即ち家庭用たると市場用たるとを問はず、庭園樹、果物、花卉及蔬菜の生又は乾燥品を生産する所のものである（Buenaventura Arazo. El cultivo de la huerta）
又大井上氏の引用された仏人セルテンスペルジェー氏の説は
Horticultureは農業の一分科にして蔬菜、果物、花卉を、園圃又は温室内に養う所のものである。且又公園及庭園の築造も所管とする。jardinageは蔬菜の生産を目的とせる極めて特殊の作業である。（Seltensperger. Dictionaire d’Agriculture et de viticulture. p. 508）
以上はホーティカルテュアを以て、広義若しくは学術的と為し、ガードニングをば狭義或は通俗的とする説である。之に対して其反対説を挙げると仏国園芸の大家カリエール氏及英国園芸の泰斗ニコルソン氏がある。
