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総合園芸大系＿園芸総論 園芸の意義と其範囲 辻村常助 |
第二章 園芸の意義
第三節 園芸の範囲
園芸の専門研究
兎に角一概に園芸と謂ふも専門又専門に分れ、分業の多岐なる事一人を以つて能く兼習するの難きを常とするのである。例へば果樹園芸に志すと花卉園芸を修むるとでは其習得に要する学課に可なりの相違あり、風致園芸と育種園芸とに於るも往々極端に教課の別異を見出すであらう。殊に是等分科中の細科目に潜心して分業の亦分業に没頭すれば、単に温室内に在つて一種の椊物の繁殖のみでも独立の専門を形造るものであつて、例へば蘭科の実生繁殖の如きはそれだけで立派な専門である。斯くの如くであれば園芸に要する教課は必ずしも悉皆兼修するの必要なき許りでなく、却つて八宗兼学の弊は藏めて深からざるに陥ゐるを以つて、園芸家を宜しく其志す所によつて取捨し、其間おのづから差別あるを覚るべきであると共に、諸学の精を聚め粹を抽きて之を園圃の実際に応用すべきであるが、学者の研究に成れる所は事の通論に關し理の概括に存するもので、之を百事に当つて一々指導し説明を与へ得るものではない。之を譬れば学理の示す所は米穀の如く、炊ぎて其味を得るは、須らく実際家の手腕によるのである。則ち理解と応用に巧みなる事は園芸の実務に当る人々の快く可らざる素質である。（完）
