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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
一、古代園芸の発達
古代の農具と耕作
此の当時の農具は最初は木片石片を用ひたるも、漸く人智の発達するにつれて貝の如きを使用して土を掘り、又木に細工を行ひたるものを使へ、遂には物理的経験の積むに従ひて耕鋤器の簡単なるものを考案して、人々が之をひいて耕作するに至つたものである。ギリシヤの初期時代に至つては、既に牛を用ひて人力に代らしむるを見るのである。
前に述べた様に、古代人達は土地老衰と云ふ事を信じて常に耕地を移轉（イテン）したのであるが、漸次肥料を用ふる様になつたのである此の肥料使用前に古代人達は輪作（ローテション）の利益を知つたらしく、ローマのカートの如きは之を推賞して居るのみならず、豆科椊物と禾本科椊物との輪作を最も奨励して居つたのである。
果樹の栽培は一般農作物に比して遅くれては居つたが、青銅時代頃からそろそろ葡萄の栽培が初まつたらしいと云はれて居る。スイス又はイタリアの湖水生活時代には、其の遺物中に之を推考し得べき考古学的證材があると云ふ事である。
エジプト人は温暖な気候とあのナイル河とによつて恵まれて居つたので、早くから農園芸が進歩発達し衣食容易なりしを以つて人口早く増殖し、よく土着して其の生を営んだのである。
エジプトでは、紀元前三、四十数世紀頃よりナイル河沿岸の平坦なる豊饒地を耕し、且つ彼等は人力を以つてナイル河水を以つて灌漑に当てたるが如く。エジプト人は其の頃既に葡萄を栽培し酒を醸し、以遠の周囲には庭を設けて果樹を栽培したのみでなく、池を設けて水蓮を培養したのが知られて居る。記録の最も古いものは、紀元前四千年前の第六王朝第四国王たりしぺーピ二世PepiⅡの王堂ピラミッドの内部に刻印せられた五種の葡萄酒吊である。当時葡萄酒はアールプ□□□と書かれ、葡萄はアールリ□□□と書かれて居つたのである。
第三図 アツシリアに於ける播種手提中に種子を入る、勿論撒播なり、今より約五千年前
第四図 牛耕古代ギリシヤ人
