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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
五、果樹園芸の発達
１ 葡萄
葡萄の栽培史
果樹栽培が何時頃から発達したかは、太古時代にあつては記録の證すべきものがないから、明瞭ではないが、葡萄の栽培は湖水生活時代からと云ふ事になつて居る。然し此の説については疑点が多く、どうも信じ難い節が多い様である。エジプトでは約七八千年前から栽培が初まつた様であるが、小亜細亜に於てもまた五六千年も前から之が栽培が行はれて居た證跡がある。聖書に出てくる大房葡萄は即ち現時のネヘレスコールと云ふ品種らしく、又目下温室葡萄の王として賞美されて居るマスカット・オブ・アレキサンドリアは、エジプトのアレキサンドリア附近が産地で（エジプトではジビブ Zibibbo と呼んで居る）今から二千年以上の歴史がある。此等の優良品種の外、内地で知つて居らぬ品種に及べば、実に古代人が既に多数の葡萄品種を栽培して居つた事が解るのである。総論の処でも一度述べた様に、エジプトの王室ピラミツドの壁面文字によつて、既に当時醸造が行はれたのは明かである。アッシリア、バビロニア等も古くから葡萄を愛椊し、古代ギリシヤでも、最も之が栽培と葡萄酒の醸造とをやつて居つたものである。有吊なテオフラステス□□□□□は其の著者中に多数の品種を記載して居る。ギリシヤ及びローマでは酒害の猛烈なものがあつて、遂にポリベス（紀元前二〇〇年頃）の時代に禁令を発せられ、之を犯せるものをば死刑に処するに至つたのである。スパルタではよく守られたが、アテネでは少しも励行されずに終つたらしいのである。
聖書に出てくる大房葡萄ネヘレスコール
マスカット・オブ・アレクサンドリア
