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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
五、果樹園芸の発達
３ 苹果（リンゴ）
矮性砧木の発見
梨の矮性砧が英国に入つたと同時に、苹果の矮性砧たるパラダイスも知られる様になり、整枝果樹の発達を来たしたのである。一七九六年には、トーマスアンドリューナイト Thomas Andrew Knight は、Treatise on the culture of the Apple を著はし、一八三一年にはローナルズ Ronalds の有吊な Pyrus malus Brentfordensis が出たのであるが、此の書は苹果の品種論であつて、此の種のものとしては貴重なクラシツクである。
又一八〇九年独人クリスト Christ の著はした果学書 Vollstandige Pomologie にも、苹果に関する研究があり、矮性砧に関しても記述して居るし、一八八四年仏人カリエール E. A. Carriere の著はした Etude generale du genre Pommier は、苹果分類学上の宝玉である。矮性砧のパラダイス及びヅーサンも農学者の知る処となつたのは、可なり古い昔であつて、一五七三年のプリニオ Plinio 著 Historia naturalis にもパラダイスの事が記されてある。独逸でも十五世紀頃には苹果の栽培が初まり、ウェルテンブルグが最も盛んであつたらしいのである。
苹果の一大害敵たる綿虫に対する抵抗品種が発見されたのは、苹果の品種改良に一大功績をもたらしたものであつて、我が北海道の前田氏はノーザンスパイの如き、所謂『綿虫上知』と称する品種と他の優良種との間生子を多数作出されて此の方面に盡して居られて居るのは苹果界の人達のよく知つて居る処である。苹果の酒即ちシードル Cidre も仏国に於て創案され、今は重要な産物の一としてノルマンディーの吊と共に知られて居る。
