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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
五、果樹園芸の発達
４ 桃
優良品種の出現
支那では早くから桃が作られた栽培品種の優良なるものが多い。彼の本邦にもよく知られて居る上海水蜜、蟠桃等は何れも支那品種である。欧州で桃が栽培され出したのは無論紀元前ではあるが、広く欧州に普及し、品種の新しいものなどが出来たのはずつと後世であつて、中世以後である。然し桃は欧州では梨、苹果、葡萄等に比しては重要な位置を占め得なかつたのである。米国加州では桃の糖蔵、乾果等の業起りしため、其の栽培も盛大となり立派に事業化したので、良品種が多数に作出されて来たのである。然し生食と云ふ立場から見ると、品質では支那品種と仏国品種が最も優良であつて、彼の上海水蜜、蟠桃等の支那種及びガランド Galande、マドレイヌルージュ Madeleine rouge、グロスミニヨンヌ Grosse Mignonne、ボヌーヴリエー Bonouvrier 等の仏種は、品質としては極めて優良である。本邦でも桃の新種は多数に発見されたのであるが、土用水蜜、白桃、金桃等は著吊である。
油桃即ちネクタリンは桃の変種と認められて居る。之は支那でも日本でも亦西洋でも、古くから知られたものであるが、食用として改良されたのは仏国と英国とが主である。英国は桃の温室栽培が早くから発達したので、此の目的に向つて作出されたネクタリンは甚だ多く、就中リヴァース氏の改良になる品種は有吊である。
