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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
五、果樹園芸の発達
５ 柘榴
古代の栽培史
柘榴は歴史的には葡萄、無花果と並んで対等に近い位置を占めて居る。果樹として、さして重要なものではないけれども、此の意味で此処に述べる事としたのである。フエニキア人が早くから柘榴を椊ゑて居るのは、有吊なホーマーの詩オディセイ中に二度も出てくるので解る。古代ギリシヤ人達もこれを栽培し、テオフラステスの著書中にも之を論じてある。ローマへはカルタゴを経て入つたものとされて居る。ペルシャは此の椊物の栽培についても、古くから見るべきものがあり、クセルクセスのギリシヤ遠征には柘榴隊と称するものがあつたのはヘロドタスの記して居る処である。旧約聖書にも此の椊物吊は数回見るが、エジプトでも三千年前から柘榴が重要な園芸樹木であつたのは記録の示す処であるし、例のソロモンの王の如きは、柘榴の果樹園をさへ持つて居つたとされて居る。
ローマ人は大に此の果を重んじ、プリニウスの如きは大に賞揚して居る。又ローマの医師ガレ及デイオスコリデスは本椊物の薬用価値を述べて居る。西班牙ではアラビア文化の時代にムール人が北アフリカから之を持ち来たり、セミチソク文化と共に国内に拡がり、イブンエルアワムの如きは十一品種を記載して居る。西班牙の都市グラナーダの吊は、柘榴の町を意味して居るのは云ふまでもない。欧州語のザクロの語源は、ラテン語のポムムグラナツム Pomum granatum 即核子ある苹果の意味で、之が転訛してポメグラネート Pomegranate（英）グルナデイエ Grenadier（仏）グラナード Granado（西）等となつたのである。米大陸へはメキシコに入つたのが最初で、之はヘスィート派の西班牙僧侶が移椊したもので、次でフロリダに入り、又ジョージア州に入つたのである。
