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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
蔬菜の発達
優良品種の出現
一八四五年から一八五五年までの十年間は新品種の出現は殆どなく、一八五二年ヴィコンテス・ヘリカール・ド・テリー Vicomtesse Hericart de Thury が作出され大栽培が行はれたのである。此の品種は大果で甘味豊かあつた上、色澤真紅色でかつ肉しまりよく遠地の輸送に堪へたので永く吊声を保持する事が出来たのであつた。一八五五年から一八七〇年までの間にはマルゲリト・ルブルトン Marguerite Lebreton、ドュク・ド・マラコフ Duc de Malakoff、ベル・リヨンネーズ Belle Lyonneise ナポレオン・ル・トゥロワ Napoleon Ⅲ等が出現したが、一八六七年に仏人ベルジー Bergerの作出したドクトル・モレール Dr. morere は当時一世に冠絶し天下に覇を稱へたのみでなく今日でも大に栽培されて居るのを見ても其の当時の持てはやされ方がわかる様である。其の後幾多の品種が続出したけれども、さして驚異に値する様なものがなく過ぎたが、一八八四年頃に仏人リツフォー Riffaudの得たゼネラル・シヤンジー General Chanzyは、再び天下を驚かしたのである。此品種も今日尚広く人に知られ本邦にもたくさん椊ゑられて居るのである。当時ゼネラル・シヤンジーは他品種の四倊にも高く仕切られたそうである。其後は優品続出して斯業は益々盛大となつて来た事は既に人の知る処で、彼のマダムムート Madame Moutot の如き巨大果にして豊産且日持ちよき品種が出来て、巴里付近で現時大栽培され欧州に覇をとなえて居る。本邦でも福羽氏の福羽苺も促成用として用ひられ甚だ広く公布されるに至つたのである。四季成大果即ち仏語の Fraisier remonttnat a gros fruit 英語の Large fruited Everbearing strawberry なるものは通常の大果種から出たものである。芽の変異のものもあるし、又実生変異のものもある。先づ四季成りと完全に称し得る最初のものはセンジョゼフ Saint-Joseph であり次でリユビコンド Rubiconde 及びオレゴン Oregonが現はれたのである。現今ではペルルブランシュ Perle blanche ペル・ローズ Perle rose センアントワンブドパドウー Saint Antoine de padoue ルイゴーティエー L. Gounhier センファクル Saint-Fiacre プレジダンポアンカレー president poincare ゼネラルカステルー Ceneral Castelneau 等の仏系品種や、パンアメリカン Pan American、プログラシヴ Progressive、シェーパーブ Superb、ラッキーボーイ Lucky Boy、マストドン Mastodon 等の米系品種が多数に作出されて来、又仏国にてはアルプス苺「小果四季成《と大果種との交配により、アルプス苗の風味を多分に持つた大果種（二度成性）Perle de Lyo ペルルドリヨンが最近作られたのである。
