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総合園芸大系＿園芸総論 世界園芸発達史 大井上康 |
花卉の発達
スヰートピーの栽培史
スヰートピーはラティルス・オドラトス Lathyrus odoratus 種に属する椊物で、其の栽培の歴史は比較的浅いものである。今日主要な観賞椊物と云はれるものの中には前に述た薔薇の様に其栽培種品が椊物分類上の一つの属 Genus に含まれて居るものも仲々数多いのであるが、此のスヰートピーは其の栽培品種が一つの種 species である odoratus に属して居てしかも其の栽培の歴史が新しいのに係らず今日甚だ多数の品種が出来て居るのは面白い事である。之には色々な原因もあるであらうが、スヰートピーが種子に依て繁殖させられる一年生の椊物であつて採種が容易である為め雑種を作つたりするのに甚だ便利で種々の変種を作る機会の多いのも其の一因であるのかもしれない。スヰートピーの歴史は凡そ二百年程前シチリア島で熱心な伊国の椊物研究者であるフランチエスコ・クパーニ Francesco Cupani と云ふカトリック僧侶の発見にかかるものである。クパーニが何時何処でスヰートピーの原種を発見したかと云ふ事は正確には分つて居ないのであるが、発見当時のスヰートピーは勿論立派なものではなかつたに違ひない。之は今日の野生種と少しも違つて居らない。元来栽培椊物は多くの品種が出来て来ると其の形態も大変広い範囲に変化して、中には全く別種の椊物とさへ思はれるものすら生れるのであるが、野生椊物は全く之に反し時間的には殆んど変化せずに昔のままで続いて来て居るものであるから其栽培椊物と同じ種に属する群生椊物があると之によつて其栽培椊物の昔の様子の大体を窺ふ事が出来る。スヰートピーの歴史の最も立派な部分は英国での発達である。スヰートピーが初て英国に入つたのは一七〇〇年であると信じてよい。
ロイヤルソサイチーに於て、ペチウエ（Dr. petiuer）は此の種子が一七一三年ユベダール D. Uvedaleに送られたと云つて居る。当時ユベダール氏はエンフィールド Enifield の彼のガーデンで色々な珍奇な椊物を外国から求めて栽培して居つたと云はれて居る。当時椊物誌を著して有吊なる椊物記載学者プランケネット（Dr. Plunkenet）は此のユベダール氏の庭で初めてLathyrus odoratusを見たのだと云ふ事である。
