植物と園芸紀行（英国編） ６選
当館にある、イギリスの植物や庭園を紹介する内容の本から６冊を選んでみました。植物学とガーデニングの国の旅です。
| Ａ | 英国ハーブと花の旅 |
| Ｂ | 英国ガーデンのバラに恋して |
| Ｃ | 英国ガーデン物語 : 庭園のエコロジー |
| Ｄ | DREAM GARDENS Discovering the Gardens of the Lake District |
| Ｅ | WILD FLOWERS of Britain and Northern Europa |
| Ｆ | The ILLUSTRATED FLORA of BRITAIN and NORTHERN EUROPE |
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Ａ 英国ハーブと花の旅
ISBN 4-946376-21-61991年に桃李出版から発行されたB5版、126頁の本です。イギリスのガーデンの写真で全編が構成されています。
英国～というタイトルですが、本書では目次にあるように、イングランドの36ヵ所の庭園を取り上げています。
基本的に見開き２頁で一つの庭園を紹介していますが、シシングハーストなどの有名な庭園については、4～6頁を費やしています。
本書の特徴は以下のとおりです。
① 写真で庭園を見せるスタイルだが、各庭園を紹介する文章の分量も多い。
② 本文の執筆は桐原春子氏による、いわゆる単著。
③ ほとんどの写真は、桐原氏によるものと、写真家長瀧衛氏によるもので構成されている。
④ 各々の庭園の来歴と見所が分かりやすく解説されているが、植物個々の説明は少ない。
⑤ その場所でのエピソードを紹介するなど、旅のエッセイとしても楽しめる内容になっている。 ↑
Ｂ 英国ガーデンのバラに恋して
ISBN 4-08-105015-5雑誌 63001-25
1996年に集英社から発行されたB5判横長の本です。書籍的な雑誌、いわゆるムックで、LEEリビングムックシリーズの１冊です。
全111頁が５つのPARTに分かれ、‘PART4＿ケイ山田と訪ねる英国ガーデン紀行’(p81～p101）と‘PART5＿イギリスの宝キューガーデンズの魅力’(p102～）が、イギリスの庭園紀行の内容になっています。 その部分の目次は、こちらです。
本書の特徴は以下のとおりです。
① 全111頁のうち、80頁までは日本国内でのバラの栽培とバラ・グッズの紹介の内容になっている。
② ケイ山田氏執筆による、いわゆる単著。
③ 日本ではそれほど知られていない、英国内の個性的な庭園を紹介している。
④ 複数名のデザイナー、編集者と写真家により、完成度の高い装丁になっている。
⑤ 著者経営のガーデンとショップの宣伝媒体という面もある。 ↑
Ｃ 英国ガーデン物語 : 庭園のエコロジー
ISBN 4-327-48136-X1997年に研究社出版から発行されたA5判のイギリスの庭園に関する学術的な本です。
目次にあるように、大きな３つの章に分かれていますが、全体をとおして、英国庭園の過去から現在までの歴史と意義を解説しています。
とり上げている英国内の庭園の数は前掲２書に比較して多くありませんが、英国庭園の歴史の上での重要ポイントが網羅されます。
本書の特徴は以下のとおりです。
① 英国の庭園について、技術面ではなく歴史的・哲学的な面から解説している‘文系’の本。
② 執筆は赤川裕氏による、いわゆる単著。
③ カラー頁がない文章主体の本だが、随所に白黒写真と図面が挿入されている。写真家の青山紀子氏をはじめ、写真の提供者の氏名があとがきに記載されている。
④ 全頁の下部1/5～1/4のスペースが脚注部になっていて、本文中の単語の解説と英文表記が充実している。
⑤ 巻末に類書ではあまり見ることのない人名索引が掲載されている。56書からなる参考文献リストには技術関連の文献はほとんどない。 ↑
Ｄ DREAM GARDENS
Discovering the Gardens of the Lake District
ISBN 0-7126-2912-21989年に Century Hutchinson 社から発行された、B5判、ハードカバーの英文書です。全128頁と大冊ではありませんが、美しい写真と読み応えのあるテキストで、湖水地方の自然とガーデンを伝えてくれます。
著者のヴィヴィアン・ラッセル（Vivian Russell）氏が手がけた最初の本で、1990年の Lakeland Book of the Year Awardを受賞しています。
湖水地方（Lake District）は、行政区としてはカンブリア州（Cumbria）に含まれ、自然と人間が生み出した文化的景観ということで、2017年に世界遺産に登録されました。
ワーズワース（Wordsworth）、ベアトリクス・ポター（Beatrix Potter）、ジョン・ラスキン（John Ruskin）、ターナー（Turner）など、数多くの芸術家の‘ゆかりの地’としても有名です。
本書が対象にしているのは、山々や湖の美しい自然景観の中につくられた人工的な庭園ですが、どれもが周囲の自然の器に‘自然に’融け込んだ調和の中にあります。
本書では目次にあるように、27ヶ所の庭園を各2～5頁を費やして紹介しています。写真を使った庭園そのものの描写よりも、各々の庭園のオーナーや管理者、あるいは、ゆかりの人々とその庭園の関わりを文章で描き出しているのが本書の特徴で魅力です。ベアトリクス・ポターのヒルトップ農場やワーズワースのダブ・コテージは観光地としても有名です。
巻末の‘A Guide to the Gardens open to the public’では、各庭園を訪ねる人のために、オープンの曜日や時間帯が記載されています。また、各庭園で栽培される植物のリストも掲載されています。 ↑
Ｅ WILD FLOWERS
of Britain and Northern Europa
ISBN 0-00-219709-X1988年に William Collins Sons 社から発行された、イギリスを中心にしたヨーロッパ北西部に自生する植物を対象にしたコンパクトな図鑑です。
著者の Oleg Polunin 氏は1985年に他界され、本書が遺作になっています。
512頁、大きさは12×19×3cmで、ポケットに入れるのは厳しいですが、リュックに入れて持ち運ぶのに手ごろです。ビニール製の表紙は水濡れにも耐える仕様です。
野外での検索を想定した企画は、この本の編集にも現れていて、カラー写真は、中間部の161頁から288頁にまとめられています。この部分を挟み込むように白黒の頁が配されています。
また、写真は白い花、青い花といった、花の色ごとにまとめられていて、それぞれの写真にインデックス番号がつけられています。この番号は白黒頁部に記載されている植物の解説文につけられた番号に対応しています。つまり、
① 野外で見つけた植物の花の色を特定する。
② その色がまとめてあるカラー頁部から植物を特定する。
③ そのインデックス番号から解説文の頁に移行する。
といった手順になります。
この編集は野外での検索には便利ですが、テキスト文（解説文）を先に読んで、その植物の写真を見たいという場面では困った状況になります。というのは、カラー頁部の写真は色ごとなので、掲載順に規則性が欠けるからです。黄色なら黄色のセクション内では昇順の番号で並んでいるので、テキストを読んで色を決めて、そのセクションで番号をたどればいきつけますが、一手間を要します。
ともあれ、イギリスや北ヨーロッパで野生植物の観察ツアーを行う場面では役に立つ一冊です。 ↑
Ｆ The ILLUSTRATED FLORA of BRITAIN and NORTHERN EUROPE
ISBN 0-340-40170-21989年にイギリスの Hodder and Stoughton 社から発行された、英文の大判・ハードカバーの植物図鑑です。
イラストは、Marjorie Blamey 氏により、テキストは、Christopher Grey-Wilson 氏によります。 全体で544頁で、植物の画像はすべてイラストによります。扱っているのはイギリスを中心にしたヨーロッパ北西部に自生している植物たちです。
各図版をただ見るだけで惹きつけられますが、解説も詳細です。英名で配列されているので、英文学中の植物を検索する場面で役に立ちます。
英国ハーブと花の旅の目次
| 英国の庭園とハーブの歴史 | |
| イングランド南東部 | 7 |
| ケント州 | |
| シシングハースト・カースル・ガーデンズ | 8 |
| リーズ・キャッスル | 14 |
| チャートウェル | 18 |
| アイホーン・マナー・ハウス | 22 |
| アイデン・クロフト・ハーブス | 24 |
| ハンプシャー州 | |
| ザ・テュダー・ガーデン | 26 |
| サーリー州 | |
| ウィズレー・ガーデン | 28 |
| ハンプトン・コート・パレス | 32 |
| イングランド南西部 | 35 |
| ウィルトシャー州 | |
| ヒール・ハウス | 36 |
| ドーセット州 | |
| コンプトン・エーカーズ | 40 |
| クランボーン・マナー・ガーデンズ | 42 |
| エイボン州 | |
| ボタニック・ガーデン＆ロイヤル・ヴィクトリアン・パーク | 44 |
| ザ・アメリカン・ミュージアム・イン・ブリテン | 46 |
| イングランド中央部 | 49 |
| ハートフォードシャー州 | |
| ハットフィールド・ハウス | 50 |
| ザ・ガーデン・オブ・ザ・ローズ | 56 |
| ネプワース・ハウス | 60 |
| グロースターシャー州 | |
| バーンズリー・ハウス | 64 |
| セルスリー・ハーブ＆ゴート・ファーム | 70 |
| ハイドコート・マナー・ハウス | 72 |
| ワーリックシャー州 | |
| シェイクスピア・バース・プレイス・トラスト | 74 |
| パックウッド・ハウス | 80 |
| バークシャー州 | |
| サヴィル＆ヴァレイ・ガーデンズ | 84 |
| オックスフォードシャー州 | |
| ブレンナム・パレス | 88 |
| ノーサンプトンシャー州 | |
| コットン・マナー・ハウス | 90 |
| ケンブリッジシャー州 | |
| エマニュエル・カレッジ | 92 |
| ケンブリッジ・ユニヴァーシティ・ボタニック・ガーデン | 94 |
| ヨークシャー州 | |
| ミドルソープ・ホール | 98 |
| ノーフォーク州 | |
| ノーフォーク・ラヴェンダー | 102 |
| ロンドン | |
| ロンドン | |
| キュー・ガーデンズ | 108 |
| リージェンツ・パーク | 112 |
| チェルシー・フィジック・ガーデン | 114 |
| チェルシー・フラワー・ショー | 116 |
| セント・ジェームズ・パーク | 118 |
| ミュージアム・オブ・ガーデン・ヒストリー | 120 |
| 参考文献 | 123 |
| マップ＆アドレス | 124 |
| あとがき | 126 |
英国ガーデンのバラに恋しての目次（一部）
| オールドローズの咲き競う修道院の庭 モティスフォント・アベイガーデン Hampshire | 84 |
| ブルックス先生の新しい英国式の庭づくり ジョン・ブルックス先生のデマンズガーデン West Sussex | 86 |
| 豪農の館を包む、自然と親しむおおらかな庭 ストーン夫妻のウォッシュブルック・グランジの庭 Suffolk | 88 |
| 児童文学者、ルーシー・ボストン夫人の愛した庭 ボストン夫妻のマナーハウスの庭 Cambridgeschire | 90 |
| ノスタルジックなやさしさにあふれる領主の庭 ノートン夫妻のマナーハウスの庭 Somerset | 92 |
| 暮らしを彩るジョージアンハウスの小さな庭 ハート夫妻のプライベートガーデン Suffolk | 93 |
| 雄大な自然のなかのヒースの庭 ボワマン夫妻のチャンプス・ヒルの庭 West Sussex | 94 |
| 昔のベジタブルガーデンの復興をめざす庭 ウエスト・ディーンガーデンズ West Sussex | 95 |
| 花と緑の祭典、「チチェスターフラワーショー」 ザ・チェチャスター・カテフォラル・トラスト West Sussex | 96 |
| ロンドン ガーデニングショップガイド | |
| ザ・チャルシー・ガーデナー | 98 |
| ラッセル | 99 |
| フルハム・パレス・ガーデン・センター | 100 |
| ザ・コンランショップ | 101 |
| イギリスの宝 キューガーデンズの魅力 | 102 |
英国ガーデン物語の目次
| 第一章 | 英国庭園の特徴 | 1 |
| Ⅰ | 英国庭園とは何か | 2 |
| 「英国の庭園」とは何か | 2 | |
| 「自然らしさ」の庭 | 5 | |
| 英国式「風景庭園」 | 9 | |
| Ⅱ | 英国式庭園の特質 ― ラウシャム・パーク庭園 | 12 |
| ウィリアム・ケント | 12 | |
| イレギュラーな庭園 | 13 | |
| 庭と共に生きる | 30 | |
| Ⅲ | 英国式庭園のひとつの極致 ― ブレニム・パレス庭園 | 34 |
| ランスロット・ブラウン | 34 | |
| 小細工を排した大きな「自然」 | 37 | |
| Ⅳ | 小空間の英国庭園 | 54 |
| 新しい英国庭園 | 54 | |
| イギリス人よりイギリスらしく ― ヒドコット・マナー庭園 | 56 | |
| 新しい英国庭園の宝石 ― シシングハースト城庭園 | 66 | |
| 主婦の庭 ― バーンズリー・ハウス庭園 | 74 | |
| 控えめな哲学、慎ましい思想 | 84 | |
| 第二章 | 英国庭園の成り立ちと展開 | 87 |
| Ⅰ | エデンとパラダイス | 88 |
| 世界の庭は幻のエデンを指向する | 88 | |
| Ⅱ | パラダイスから | 93 |
| 庭園の発生 | 93 | |
| 古典主義の時代 | 97 | |
| 古典主義庭園完成期 | 104 | |
| 変化のきざし | 119 | |
| Ⅲ | エデンへ | 129 |
| 風景庭園の輝ける星々 | 129 | |
| 風景庭園への批判 | 137 | |
| 第三章 | 野生の庭園 | 147 |
| Ⅰ | 英国庭園が現代に問いかけるもの | 153 |
| 植物と人間 | 154 | |
| 縮小する庭 | 154 | |
| Ⅱ | 自然への認識 | 162 |
| 環境と人間 | 169 | |
| 「公共」という概念 | 169 | |
| 新しいエデン | 179 | |
| あとがき | 193 | |
| 関連年表 | 197 | |
| Bibliographical Notes | 199 | |
| さくいん | 203 |
DREAM GARDENS
Discovering the Gardens of the Lake District
CONTENTS
| DREAMING THE DREAM | |
| Isel Hall, Cockermouth Mary Burkett | 12 |
| Rusland Hall, Rusland Julia Peiffer Watenphul | 17 |
| Crag Cottage, Rosthwaite Sue Fisher | 21 |
| Brantwood, Coniston John Ruskin's Garden | 23 |
| Hutton in the Forest, Penrith Richard and Cressida Vane | 28 |
| The Old School, Mungrisdale Dorothy Chalk | 32 |
| Coombe Cottage, Borrowdale Vivian Russell | 35 |
| Scarthwaite, Grange in Borrowdale Nan Hicks | 39 |
| Bethaven, Grasmere John Ingham | 43 |
| Miresyke, Loweswater Joan Laskey | 47 |
| THE DREAM FULFILLED | |
| Four Oaks, Warwick Bridge Edith Dickman | 51 |
| Levens Hall, Kendal Hal and Susan Bagot | 54 |
| Dalemain, Ullswater Sylvia Mary McCosh | 58 |
| How Ghyll, Applethwaite Miss Vera Dixon | 62 |
| Victor and Sarah Anne's Garden, Eden Valley Victor and Sarah-Anne's Garden | 65 |
| The Old Mill, Thurstonfield Jean Thomas | 71 |
| Holker Hall, Cark in Cartmel Mr and Mrs Hugh Cavendish | 74 |
| High Rigg, Grange in Borrowdale Molly Birkett | 79 |
| PRESERVING THE DREAM | |
| Acorn Bank, Temple Sowerby | 84 |
| Graythwaite Hall, Hawkshead Myles Sandys | 88 |
| Sizergh Castle, Kendal | 92 |
| Hill Top, Sawrey Beatrix Potter | 97 |
| Dove Cottage, Grasmere William and Dorothy Wordsworth | 102 |
| Rydal Mount, Rydal William and Mary and Dorothy Wordsworth | 106 |
| Lingholm Gardens, Keswick Viscount and Viscountess Rochdale | 109 |
| Muncaster Castle, Ravenglass Patrick Gordon-Duff Pennington | 114 |
| Stagshaw, Ambleside | 119 |
| Map of the Gardens open to the public | 124 |
| A Guide to the Gardens open to the public | 125 |
- 英国ハーブと花の旅
（書籍：紀行：海外の植物・園芸・庭園・生産地） - 英国ガーデンのバラに恋して
（書籍：紀行：海外の植物・園芸・庭園・生産地） - 英国ガーデン物語
（書籍：紀行：海外の植物・園芸・庭園・生産地） - 園芸中古書探訪（書架：紹介コーナー）
- バックナンバー再読（書架：紹介コーナー）
- ちょっと見☆海外園芸書（書架：紹介コーナー）