The Reference Manual of Woody Plant Propagation
From Seed to Tissue Culture
Encyclopedia
木本性植物の繁殖マニュアル＿種子繁殖から組織培養まで
繁殖事典
Magnolia
モクレン属
Magnolia
magnolia類はモクレン科に属し、約85種で構成され、アメリカ大陸とアジア原生である。この属には落葉と常緑のタイプが含まれ、一番価値があるのは、その派手な花であるが、葉序と果実も価値がある。Magnolia grandiflora、southern magnolia、M.kobus、kobus magnolia、M.×soulangiana、saucer magnolia、M.quinquepeta、lily magnolia、M.stellata、star magnolia、そして M.virginiana、sweetbay magnoliaが最も重要な造園種である。
種子：種子からmagnolia類を育て上げる主な理由は、接ぎ木台を供給するためである。ほとんどの種が種子からの繁殖が可能であるが、花を咲かせるのがゆっくりで、親と異なったものになる。合衆国においては、M.kobusとM.acuminataが接ぎ木台として広く使われている。他の、しばしば種子から育てられる種には、M.grandiflora、M.×soulangiana、M.stellata と M.virginianaがある。
cone状（袋果(follicle)の集積）のmagnoliaの果実は、長さが２インチから６インチまでバラバラで、１個か２個の種子を含んだ袋果が、数個から多数集まったものである。果実は、晩夏から秋の中頃にかけて熟する。成熟すると、ｵﾚﾝｼﾞ赤色から赤色の外側の種皮（aril）が肉質化し、油っぽくなり、内側の種皮が堅くなる。果実が完全に成熟したときに種子を収穫すべきで、その時は、袋果が開いて種子を曝している。もし全ての袋果が開かなかったならば、果実を暖かい部屋に置いて完全に熟させるべきである。早目に果実を採取するのが重要である。なぜなら、種子は袋果から現れると、しばしばすぐに飛散することがあるからである。
果肉質を除去することで発芽率が最高になる。水への浸漬処理（maceration）で、果肉を除去する。毎日水を取り替えて、２日間続けて浸漬し、フルイに擦りつけたり、こすったりして果肉を落とし、浮かび上がらせる。多数の研究者が、新鮮なarilは発芽率を減少させる抑制物質を含有していることを報告している。浸漬処理の後の過剰な乾燥は、種子の活性の損失につながる可能性がある。採取年や採取した場所の違いにより、種子の大きさは相当に異なる。
magnoliaの種子は、密封した容器を使って 32〜41ﾟFで貯蔵すれば、少しの活性低下で、数年間保存することができる。室温で越冬保存すると活性を失ってしまうmagnoliaもある。magnoliaの種子には胚休眠があるが、これは、32〜41ﾟFでの２〜４カ月間の低温層積処理で克服できる。新鮮な種子から実生苗を生産する時、そのポテンシャルは種子毎に相当異なったものである。不適当なあるいは不完全な受精がその原因であると信じられている。実際の育苗作業では、magnoliaの種子は秋播きで厳重にマルチするか、層積処理し、晩冬か春に播種するかが可能である。多数のMagnoliaの種の胚が未成熟（形態学的休眠）で、胚が発芽可能の大きさに達するまでの後熟期間が必要であること暗示する、広範な証拠が存在する。年長の筆者の研究では、Magnolia grandifloraの新鮮な洗浄された種子が暖房したガラス温室内の育苗箱に播かれ、４カ月後に約75％が発芽した。
挿し木：挿し木繁殖が無性繁殖では好ましい方法である。多数の種と栽培品種が挿し木で繁殖可能である。若くて、前に挿し木された親木から選抜された挿し穂材が、最もよい材料を提供する。幼若な親木植物の重要性を強調しすぎることはない。アラバマ北部の大きな育苗園では、Magnolia ×soulangianaの親木を晩冬に地際で切り、新梢を出させている。しばしば、ベンレートのような殺菌剤がホルモンに混ぜて使われたり、繁殖ベンチに散布されたりする。移植過程については配慮しなければならない。なぜなら、根は大きく、肉質で、疎らなことが多いからである。年長の筆者は、多くの落葉性と常緑性の種を発根させたことがある。全般的に、挿し穂の状態としては、緑枝挿しから半熟枝挿しにあるべきである。頂芽挿しでは、最後の葉が完全展開に近い状態にあるべきである。Magnoliaは高濃度のホルモンに反応するので、5000〜10,000ppm（またはそれ以上）のIBA粉末あるいは溶液が使用される。培地は排水をよくし、また、均一なミストを用意すべきである。夏場は、底面暖房は必要ないが、使用することはできる。Magnolia grandifloraに対して、高温の底面暖房（75〜85ﾟF）が推奨されてきたが、年長の筆者は、それは必ずしも必要ではないとみている。magnolia類は発根後の移植に対する抵抗性がない。また、根は目立った生長をするだろう。根は大きく、粗くて肉質、また普通は本数が少ない（１本の発根した挿し穂当たり３〜７本）。移植過程に配慮するべきである。
傷つけ処理は有効で、おそらく役に立つだろうが、これをしなくても、多数の種はよく発根する。
全てのmagnolia類が同じ程度に発根するわけではない。Magnolia heptapeta（M.denudata）、M.acuminata、M.cordata、M.grandifloraと大きな樹木タイプの種は発根困難である。Syringa同様、Magnoliaの種と栽培品種は、狭い"発根可能の窓"をもつ。ほとんどの分類群（taxa）にとって、６月と７月が最適の月である。しかしながら、Magnolia grandifloraは、８月〜９月の堅くなった材の挿し穂から最もよく発根する。M.grandifloraについては、IBAよりもNAAの方が効果的であることを示す幾つかの証拠がある。この関係は、他の種に拡張可能である。magnolia類は、完全に発根するのに、種あるいは栽培品種によって異なるが、６〜８、あるいは10〜12週間を要する。
組織培養：Magnoliaの種と栽培品種については、うまくいくかどうかは捕らえどころのないものであった。ある営利の研究所は、'Elizabeth'と他の１〜２種の培養に成功した。あきらかに、増殖が始まるまでの培養に要する時間が拡大し、増殖率は高くない。2mg/lのBAを添加した木本性植物培地が初代培地として適当である。年長の筆者は、Magnolia grandifloraのクローンを試みたがうまくいかなかった。フェノール物質の"出液（bleeding）"が問題であり、おそらく幾つかの継代培養についても、このことが問題となる。