The Reference Manual of Woody Plant Propagation
From Seed to Tissue Culture
Encyclopedia
木本性植物の繁殖マニュアル＿種子繁殖から組織培養まで
繁殖事典
Picea abies
オウシュウトウヒ
Norway Spruce
種子：P.abiesの毬果は熟すと褐色になるが、成熟は９月〜11月に起こり、９月〜４月に種子の剥離が起こる。毬果は熟す直前に採取するのが最もよい。１ポンドの種子は平均して64,000粒である。種子には播種前処理が必要ないが、３週間の低温層積処理が発芽を均一化するという記載がある。春播きの前には、播種前の24時間の水への浸漬が有効であるかもしれない。発芽可能な種子の率は80％である。
挿し木：発根は困難であり、いわば挑戦である。栄養状態、挿し穂のタイプ、季節、培地とホルモン処理が重要な要素である。年間の挿し穂を採取する時期が、論争点となっている。数多くの研究がなされているが、ある繁殖家にとっては最高の結果をもたらしても、他の人には成功をもたらさないこともある。Girouard（カナダ）、47年生の植物体での季節についての研究では、春（４月〜５月）の芽が開く前か、開いている時期、あるいは秋の半ば（９月下旬〜11月中旬）の、冷涼な気温に植物体が遭遇した後に挿し穂を採取すべきことが発見された。他の研究者達は、６月と７月、および９月中旬から４月中旬までの発根の方がよいことに気づいた。発根培地としてはパーライトがよいとされているが、一方、ピートモス：砂（1:1、v/v）もまた有効であった。幼若な樹木から採取した挿し穂が最も発根し、15週間以内に発根するが、一方、毬果をつけるほどに成熟した樹木は、20〜23週間を要する。頂部の挿し穂と側枝からの挿し穂とでは、発根後の生長のタイプが異なる。側枝からの挿し穂は横に拡がる（plagiotropic）性質をもち、より潅木状の形状になる。頂部の挿し穂は、自然に上向き（orthotropic）に生長する性質をもつようになる。加えて、樹冠中の挿し穂を採る位置や場所が、発根の容易さに影響を及ぼす。樹冠の下部1/3から採取した挿し穂は、上部1/3から採取した挿し穂よりも高い率で発根する。
発根ホルモンの効果についての報告は千差万別で、効果がなかった（あるいは抑制した）というものから、促進効果があったというものまである。Girouardは、最もよく発根し、生存し、枝を伸ばした挿し穂の中に、オーキシンで処理しなかった挿し穂があることに気づいた。しかし、Enrightは、IBAが添加量に比例して発根率を増加させることを発見した。自然光が当たる時間はミストの下に挿し穂を置き、長日状態を与えるために白熱電球を使用する。参照 The Plant Propagator 14(2):5(1968),19(2):16(1973),20(1):20(1974),21(3):9(1975)。
P.abiesの栽培品種群の挿し木繁殖：多数のNorway spruceの矮性栽培品種について、営利的な率で挿し木繁殖することが可能である。P.abiesの栽培品種を発根させている人々の数と同じ位に多くの、発根に関係した推薦状がある。以下の手順は、Iseli と Van Metaによって次の栽培品種のために開発されたものである。'Gregoriana Parsoni'、'Little Gem'、'Macronata'、'Nidiformis'、'Ohlendorfii'、'Pumila'、'Pygmaea'、'Remontii'、'Repens'、そして'Sherwoodii'（'Sherwood's Multinomah'）（The Plant Propagator 26(3):9(1980)）。最適の栄養状態に保たれた容器栽培の親木からの挿し穂が最もよい。挿し穂の採取は７月下旬（オレゴン）から始め、９月中旬まで続ける。大きめの挿し穂（５〜６インチ長）も、小さめの挿し穂（１〜２インチ長）と同様にうまく発根する。挿し穂の準備が整ったら直ぐに、10：1の水とDip'N Grow'の溶液に５秒間浸漬し、水の掛けすぎが障害を与えないように、粗めのパーライトに挿す。挿し穂が成熟するまでミストを与える。それまでは、普通、数週間ミストを続ける必要があるが、培地に水を掛けすぎないようにしつつ、針葉を常に湿らせる必要がある。底面暖房は発根に要する期間を早めるが、発根率には効果がない。発根の開始が観察されると直ぐに、挿し穂の葉への供給（folial feeding）が始まる。挿し穂がよく発根した後は、耐寒性をつけるために戸外に移動し、その後、小さめのポットに移植する。Kellyはspruceの矮性栽培品種（'Barryi'、'Capitata'、'Decumbens'、'Dumosa'、'Maxwellii'、'Microsperma'、'Nidiformis'、'Pseudo Maxwellii'、'Pumila Glauca'、'Repens'、そして'Tabuliformis'）についての試験を試みた。そして、夏挿しで、'Repens'を除いた全てのものが、８月中旬に向かって発根率を上昇させることを発見した（PIPPS 22:238(1972)）。
"witches' blooms"の発根には相当の変異が存在する。７年生の"witches' blooms"の40クローンからの挿し穂で、11月中旬採取、1000ppmのIBA粉末、ピート：砂（1:1、v/v）を使用して、9クローンが発根率100％、31クローンが発根率50〜75％、9クローンは発根しなかった。"witches' blooms"に関する、これ以上の情報については、Pinusの導入部を参照のこと（PIPPS 35:555(1985)）。