和名の如くなって居るコスモス
コスモスと云へば日本全国によく行き渡つて居る外来花草であつて、メキシコの原産の一年草であるが、今ではコスモスといふ名が和名の様になつて通用して居る。これはコスモスといへば誠に発音が簡単で言ひ易く且つ調子がよいから速に此名が遠近に広まつたものだが、然し元来此コスモスは属名で此属の総名なのであるから、之れを属中の一種のものの専有名としてはあまり好い名ではない筈だ。即ち今一般にコスモスと云つて居る植物は属中で(
Cosmos bipinnatus Cav.)といふ学名を有つて居るものである。ところが以前
松村任三博士がこのコスモスにおほはるしやぎく、といふ和名をつけたが、其名があまり雅馴でなく且つ長いから世人はコスモスの響きのよい名を採て呼び折角松村博士の付けた名を誰れも余り使はない。今世間ではコスモスといふ外あきざくらの名が、洽ねく使はれて居るがこれも呼び易い名で且つ余り悪るい名でもないから和名として先づよいと思ふ。