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総合園芸大系＿園芸総論 植物園芸の分類 牧野富太郎 |
はしがき
地球上へ今日の様にいろいろの植物が出来たといふ事は、これは実に悠久な年数を経て来たものであって、始めは極単純なものより始まって、歳月を経るに従って段々と変化を来し、増加して来たものであって、年数で言うと、実に何千万年といふ間生えて来たのであるから、その間に種々な種類に分れて、今日の様な状態になって来たものである。そんな関係から、永い間に自然に、縁の近いものと、遠いものとが出来、生物界に種々雑多なものが出現したのである。それで、縁の近い物といふのは形態の似たものであるし、遠い物といふのは双方が互にかけ離れた形に変って来て、自然に其間に縁のなくなった者である。そういふ事を考へて、生物界のうちで縁の近い物同志を集めて、一つの種属となし、丁度人間が一家をなすと同じ様に、植物の方でも縁の近い物同志を集めて一つの科（Family）という物を造った。その科のうちでは其植物の種類の数が同じかといふと、そうではなく、多いものと少い物とがあって決して一様ではない。そういふ様な縁の近い科のうちで、またモット縁の近いものを属（Genus）としてある。そしてその属を組立てて居るものが種（Species）で、この種が今日吾人がウメとかサクラとか云うものになって居る。
種のうちにまた変物があって、それが其変わった姿を、よく固定して居るのが変種（Variety）である、変種のうちがまた細かに分かれたのが異品（Forma）となって居り、そのうちをまた細かにすれば細かに分ち得られる。園芸の品種では、異品を目標にして分けて居るものが沢山にある。そういふ風に下の方へ向っての分け方は果てのないものである。凡そ、植物の科とか属とかいふ事はザッと上に述べた様な組立てになって居る。
