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総合園芸大系＿園芸総論 植物園芸の分類 牧野富太郎 |
桜類でないしでざくら
しでざくらはさくらといふ字がついて居る為めに、盆栽屋が桜の類と間違へて居るが、さくらとは全く違ふものである。一名ざいふりぼくといふもので春早く花が群れて咲くところからそれを形容してかく名付けたものである。しでざくらのしでといふのは注連などにさげる切り紙のやうなものを云ふのでそれが白く沢山さがつた有様に似て居るからである。しでざくらは実が生るが、それは専門的にはさくらんぼとは全く違つたもので、梨、林檎の如き果実に類したもので、花托が果実を包んでああいふ形をしたもので、花托と真正の果実との二つの部分が連合して果実になつて居るので、子房ばかりで果実になつてものではない。桜や梅は子房だけで果実になつたもので、それから見ても、しでざくらは全くさくらとは異なるものである。しでざくらの学名は（Amelanchier asiatica Endl.）であつて、さくらの属（Prunus）ではない。
